DESIGN COMPUTING CRAFT
2014.04.15
  • 一覧へ
  • Category:
  • Diary (13)
  • Book Review (2)
  • Column (10)
  • Report (11)
  • Archive:
  • Search (Articles) :
Column

BOOKS ON JAPAN: Beyond The Space, Beyond The Time #1 森岡督行

『TOKYO』TOKYO METROPOLITAN GOVERNMENT / 1955

その年を漢字一文字で表すと何になるか。2013年は、2020年夏季オリンピックが東京に決まったことを受けて、「輪」が選ばれました。開催に関して様々な意見があると思いますが、私は、東京に決まってよかったと思っています。競技はもとより、どんなロゴマークやポスターが考案されるのか、どんなユニホームが見られるのか、どんな競技場が姿を現すのか、そして、これらを担当するのは誰なのか、興味が尽きないからです。

調べてみると、東京は過去に5回、夏季オリンピックに立候補しているようです。すなわち、1940年、1960年、1964年、2016年、2020年。このうち、1940年と1964年、2020年の3回が選ばれたことになります。

今回紹介するのは、1960年東京オリンピック招致運動の際につくられた写真集です。本文は全て英文で、1955年に刊行されました。敗戦から10年後の東京には、高層ビルが建設されはじめ、急速な復興が目に見えて明らかになりつつありました。その様子を、国際オリンピック委員会に向けて可視化するため制作されたのがこの写真集だったという訳です。序文には、1940年に開催が確定していた東京オリンピックと札幌オリンピックが、不幸にも、日中戦争激化のため実現できなかったことが記されています。

本体は和装本と洋装本の二冊組になっていて、和装本には、旧国立競技場や、戸田競艇場、馬事公苑などの競技施設が写されています。この3施設は、本来1940年の東京オリンピックで使用する予定でした。しかしオリンピックより戦争を選んだ日本は、旧国立競技場で学徒出陣壮行式という、平和とは正反対のイベントを行いました。

洋装本には、丸の内のビルや、皇居、日光東照宮、法隆寺、相撲、こいのぼり、お雛様などの日本の近代化と文化を紹介する写真が掲載されています。また、現在の代々木公園にあたる、当時のワシントンハイツと呼ばれた米軍住宅地が、オリンピック選手村になることも紹介されています。

デジタルメディアが登場する以前のことなので、この写真集が伝えるイメージの役割は大きかったはずです。しかし、1960年東京オリンピック招致は、ローマに敗れてしまいました。今も昔も東京オリンピック招致は、一筋縄ではいかないのでしょう。

そういえば、2020年の東京オリンピックが決まった直後から、新しい国立競技場をどうするかでも、二転三転しはじめました。採用されたザハ・ ハディドの設計案だと、競技場が大きすぎて、景観を乱す、神宮外苑の緑が消失する、あるいは屋根が積雪に耐えられないなど、異論が噴出したのです。そもそも採用のプロセスも不透明だったとも…。二転三転の結論はどこに落ち着くのでしょうか。この観点からも、2013年は「輪」の年だったといえそうです。

web_m968

web_m974

photo: Seiji Mizuno

 

森岡督行(もりおか・よしゆき)
1974年生まれ。東京・茅場町にある昭和2年築の古いビルで、写真集や美術の古書を扱う森岡書店を営む。著書に『荒野の古本屋』(晶文社)、『BOOKS ON JAPAN 1931–1972 日本の対外宣伝グラフ誌』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『写真集 誰かに贈りたくなる108冊』(平凡社)がある。『芸術新潮』にて「作家が覗いたレンズ」、新潮社・とんぼの本のホームページにて「森岡書店日記」を連載中。

loding...